
葬儀や法事のときに行うお焼香。
しかし、なかなか作法を覚える機会もないので、周囲の人の様子を伺いながら「何となく行っている」という人も多いのではないでしょうか?
今回は、お焼香の意味や正しい作法について紹介します。
そもそもお焼香とは?
そもそもお焼香とは、仏教における葬儀や法事などで行われる供養の1つです。
広い意味ではお線香をあげることも焼香になりますが、一般的には抹香(まっこう)をつまみ、香炉の上に落として香を焚くことを指します。
まずは、お焼香の意味や由来についてチェックしてみましょう。
お焼香をあげる意味
お焼香は仏様のためにあげるものと思っている人も多いかもしれませんが、お焼香する人の心身の穢れを祓うという意味もあります。
まずお焼香する側の心と身体を清め、仏様と向き合いましょう。
仏教において、お焼香で焚かれる香りは仏様の食べ物だと考えられているため、お焼香で香りをお供えしているのです。
また仏が住む極楽浄土には良い香りが漂っているとされ、仏が故人を迎えに来る際には、その香りを一緒に運んでくると言われています。
香りが隅々まで広がり、すべての人に平等に行き届くお焼香は、仏の慈悲を讃えるという意味も込められています。
そしてお焼香が灰になり、時間の経過と共に香りが消えていくことにも、命はいずれ消えていくものという無常観を教えてくれているのです。
お焼香の由来はインド
お焼香が日本に渡ってきたのは、仏教が伝来した6世紀頃だと言われています。
お焼香発祥の地はインドで、インドでは仏教がはじまる以前から白檀などのお香を焚く習慣がありました。
英語名でサンダルウッドと呼ばれる白檀は、ほのかに甘い優しい香りが特徴的で、主な原産国はインドをはじめとしたアジア地域です。
暑さが厳しく高温多湿のインドでは、遺体の腐敗臭が生じやすいため、臭いを抑えるためにお香が焚かれるようになりました。
また、悟りを開いたお釈迦様が仏教を広げるときに、説法を聞きに来た労働者たちの体臭が気になり、説法に集中するためにお香を焚き始めたとされる説もあります。
お焼香の作法
お焼香には、いくつか作法があります。
抹香は右手の親指、人差し指、中指の3本でつまみ、指をこするようにしてパラパラと香炉の上に落とすのが基本です。
しかし、押しいただく(額の高さまで上げる動作)回数は宗派によって異なります。
ここでは、お焼香の種類や作法について解説します。
お焼香の種類
お焼香には立礼焼香、座礼焼香、回し焼香の3種類があります。
故人との関係が深い人から順番にはじめるため、最初は喪主、次に親族、その後参列者という流れで行われるのが一般的です。
参列者の順番に決まりはありませんが、葬儀の規模によっては2人~3人同時に焼香をあげることも。
それでは、お焼香の種類をそれぞれチェックしてみましょう。
立礼焼香(りつれいしょうこう)
椅子席がある式場では、立礼焼香が行われることが一般的です。
立礼焼香では順番が回ってきたら席を立って祭壇に進み、焼香台の手前で立ち止まって僧侶とご家族に一礼します。
遺影(ご本尊)に合掌し、一礼したらお焼香をしましょう。
再度遺影に合掌したら、ご家族に向かって一礼して席に戻ります。
座礼焼香(ざれいしょうこう)
座礼焼香では、畳敷きの会場で行われることが多い形式です。
基本的には立礼焼香と同じ手順ですが、自分の順番が回ってきたら、膝行・膝退(しっこう・しったい)と呼ばれる中腰の姿勢で移動します。
お焼香をするときは、正座で行いましょう。
まっすぐ立ち上がるのはマナー違反とされるので、注意してくださいね。
回し焼香(まわししょうこう)
回し焼香は、焼香台を順番に回しながら行います。
主に自宅や小規模の式場で用いられ、焼香台と抹香がお盆にのせられた状態で回ってきます。
自分のところに回ってきたら、隣の人に軽く会釈をして両手で受け取りましょう。
お焼香が終わったら、次の人へ回してください。
椅子席の場合は、自分の膝の上にお盆をのせて焼香します。
お焼香は宗派によって回数が異なる
お焼香を押しいただく回数は、宗派によって異なります。
たとえば真言宗は3回、浄土宗は1~2回、天台宗は特に決まりがなく念じる気持ちを大切にしています。
相手の宗派に合わせることで敬意を表すことができますが、自身の宗派の作法でお焼香をあげても問題ありません。
たとえ宗派や作法が分からなかったとしても、故人の冥福を心から祈る気持ちが一番大切なので、あまり細かい形式などは気にしなくても良いとされています。
もし相手の宗派に合わせたいのであれば、僧侶や喪主がお焼香で何回押しあげているのか確認しておくといいでしょう。
仏式の葬儀や法事などで行われるお焼香には、まずあげる人の心身を清め、心を落ち着かせたあとに、仏様に向き合うという意味があります。
意味を理解しておくと、これまで以上に心を込めてお焼香をあげることができるはずですよ。
宗派によって細かい形式は違いますが、一番大切なのは故人を想う気持ちです。
押しいただく回数やマナーばかりにとらわれていては、本末転倒。
いざというときに焦らないためにも、基本的な作法を覚えておくといいでしょう。